ロータリー財団月間 卓話
地区ロータリー財団 補助金委員会 副委員長 藤野直子
※この卓話は2021年11月に寄稿頂いたものです。
皆様こんにちは、地区ロータリー財団 補助金委員会の副委員長を仰せつかっております、藤野直子と申します。名古屋名東ロータリークラブより出向しております。本日は、ロータリー財団月間にあたり、ロータリー財団へのご理解を深めていただけるよう、卓話をさせて頂きます。
まず初めに、ロータリー財団の使命についてお話致します。使命は、ロータリアンが健康状態を改善し、教育への支援を高め、貧困を救済することを通じて、世界理解・親善・平和を達成出来るようにすること。標語は、「世界でよいことをしよう」 Doing Good in the Worldです。
今から104年前、1917年に、「世界でよいことをするための基金を作るのが、極めて適切である」
との、アーチ・クランフの提案により、財団がスタートいたしました。そして、「全世界で多くの人の 人生を変える財団」へと発展いたしました。
では、その財団が出来たころの時代背景はどのようなものだったでしょうか?1900年代初頭
つまり、ロータリーが生まれた頃のシカゴの街は、多くの人や車で活気にあふれていました。
シカゴは、古くから五大湖からミシシッピ川につながる水運の拠点として発展してきていましたが、1890年代に入ると、大陸横断鉄道の開通によってさらに急速に発展していきました。同時に多くの人がシカゴに移り住んできたのですが、当時のシカゴの人口は約8割が外国からの移民だったそうです。東部から西部、あるいは南部への往来の拠点となり、さまざまな人々が行き来するにぎやかな場所でした。西へ南へと一獲千金を目指す人々が入り乱れ、商業道徳が乱れていきます。いわゆる「正直者が損をする」ような、金儲け第一主義の精神がはびこっていました。
そして間もなく、1920年代からは、禁酒法の影響などで、アル・カポネに代表される、いわゆるギャングが暗躍する街となっていったのです。
さて、そのような混とんとした社会情勢の中で、ビジネスマンにとっては「信じられる仲間」「信じられる取引相手」が必要になってきます。そこで信じられる仲間、信じられる取引相手たちと「仲間内のグループ」と言いますか、「互助会的な組織」がつくられていくことになります。ポール・ハリスの呼びかけで、「仲間内の集まり」として始まったロータリークラブもその中の一つでした。
当時このような互助会的な組織はたくさんあったようです。
ではなぜ、たくさんあった互助会的な組織の中で、ロータリーが生き残り、しかも発展したのでしょうか?それは、一言で言えば、「社会との接点」を持ったからです。元の言葉、英語ではServiceと表現していますが、日本語ではやや硬い「奉仕」と訳されています。なんだか自らほうきを持って行う道路の清掃活動をイメージしてしまいますが、私たちの奉仕の本質は少し違います。自分たちの持つ専門的知識や経験、幅広い人脈などを活用してより良い社会作りに役立つことです。
ロータリー発足当時の逸話をご紹介します。ロータリーが発足して約1年後の1906年4月に、ポール・ハリスは特許弁理士ドナルド・カーターに入会を勧めました。しかし以外にもカーターは、入会の誘いを断るのです。『職業を持って社会で生活している以上、職業を通じて社会に貢献することが自分が存在する証になるのであって、自分たちだけの利益にこだわって、社会的に何もしない団体に将来性も魅力もない』と言って勧誘を断わったそうです。しかし、ポールは落胆しませんでした。逆に、以前から会員間の互恵と親睦のみに終始することに限界を感じていたポールは、このことをきっかけに定款の改正に踏み切って、再度クラブへの入会を促しました。すなわち、シカゴ・ロータリークラブの定款に第3条を加えたのです。シカゴ市の最大の利益を推進し、シカゴ市民としての誇りと忠誠心を市民の間に広める ・・・ というものです。この第3条については、『まったく利己的な組織は永続性がない。もしも我々がロータリークラブとして生き残り、発展することを望むならば、我々はある種の市民に対する奉仕をしなければならない。この定款の改正は、我々の市民に対する奉仕を含めるように、シカゴ・ロータリークラブの綱領の拡大を目的としたもの』 ・・・ と語られています。
そして、ロータリーの象徴的な奉仕事業の第一歩として、1909年にシカゴ市役所と公立図書館の横に2つの公衆トイレを設置したのです。「より良い社会のため」を目的とするロータリーの活動、いわゆる奉仕活動のスタートであり、ロータリーの「社会との接点」との始まりです。サービス、つまり奉仕を通して社会との接点を重視してきたロータリーは、その後、社会情勢の変遷を生き残り、さらに大きく拡大、発展してきました。一方、組織内の相互扶助、互恵関係のみを重視したグループはその後の社会情勢の変化の中で次第に衰退、消滅していったのです。
そして、そのロータリーの奉仕活動を資金面で支えてきたのがロータリー財団です。
さらに、ロータリー財団の支援プログラムも100年の歴史の中でいろいろと工夫されてきました。
その一つが、2013/14年度にスタートした「未来の夢計画」です。「未来の夢計画」の特徴を一言で言えば、奉仕プロジェクトが「ロータリー財団本部主導」から「ロータリアン主導」に変わった点です。つまり、ロータリアンが自ら事業を計画し、また自らの事業に寄付金を使えるようになったのです。いわゆる地区補助金、グローバル補助金と呼ばれているものです。より多くのロータリアンが奉仕事業に参加できるよう意図されたものです。
次に、活動の原資となる財団への寄付についてお話します。
現在、地区では年次基金に150ドル、ポリプラス基金に30ドルを目標として呼び掛けています。
またこれは、日本全体共通の目標でもあります。
愛知ロータリーEクラブさんでは、昨年度はお一人当たり、年次基金118.61ドル
ポリオプラス基金には46.11ドルのご寄付をいただきました。ご協力ありがとうございます。皆さんから寄付された年次基金は、3年後に、地区活動資金となり、皆様の奉仕活動でお使いいただきます。財団のモットーは「世界で良いことをしよう!」です。社会のニーズに応えるため、どうぞ財団のプログラムを活用してください。
最後に、エンドポリオについてお話しします。
今はパキスタンとアフガニスタンの残すのみとなりました。しかも、皮肉にも新型コロナ対策が徹底したおかげでしょうか、今年の発症はそれぞれ1例にとどまっています。本当に「あと少し」のところまで来ています。皆さんご承知の通り、一人でもポリオ発症者がいれば、日本を含め、世界中の子供にワクチンを打たなければなりません。ですからアフガニスタンやパキスタンだけの話ではないのです。逆に、ポリオが根絶されれば、世界中でワクチンを投与あるいは接種しなくてもよくなります。経済的にも大きな効果があります。ポリオ根絶まで「あと少し」です。どうぞ引き続きご協力をお願い申し上げます。

1990年初頭 シカゴの写真

パキスタンのワクチン投与ステーション